炎症性腸疾患な風景

間質性膀胱炎,潰瘍性大腸炎,膠原病と共に生きる人の日記

水圧拡張術から3年 #間質性膀胱炎

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私は3年前のGWに膀胱水圧拡張術という手術を受けました。病名は間質性膀胱炎です。おかげさまで今はすっかり良くなり、トイレの心配をせずに生活しています。この記事が同じ病気の人の励みになったり、「頻尿」「膀胱痛」で検索している人の参考になったりすれば嬉しいです。

間質性膀胱炎とは

間質性膀胱炎研究会というこの病気の学会みたいなものがあり、そこにはこう書かれています。

間質性膀胱炎とは、「膀胱の非特異的な慢性炎症を伴い、頻尿・尿意亢進・尿意切迫感・膀胱痛などの症状を呈する疾患」(間質性膀胱炎診療ガイドラインによる)である。中高齢の女性に多いが、男性や小児にもみられる。原因は不明で、膀胱粘膜の機能障害や免疫学的機序が想定されている。頻回な排尿や膀胱の痛みによる苦痛から生活の質は大きく損なわれる。確立した治療法はなく、対症的な治療に留まる。再燃と寛解を繰り返し長期にわたる医学管理が必要となる。

間質性膀胱炎について | 日本間質性膀胱炎研究会

間質性膀胱炎(IC:Interstitial Cystitis)はその名のとおり「膀胱炎」なのですが、よくある急性膀胱炎と違って尿検査を受けても、細菌が検出されません。

なので、最初は過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)の薬が処方され、それが全然効かず、一日に百回近くトイレに足を運ぶようになり地獄を見るという典型的な経過をたどりました。

ちなみに、私の場合は始めから「膀胱痛」を訴えていたわけではなく、後にICと診断されてから「膀胱が痛くて、おしっこが溜められなかったんだ」と理解するようになりました。

あえて、そう意識する必要はありませんが「頻尿だけで痛みを感じないなら間質性膀胱炎じゃない」と病気を全否定する医者に出会ったら、私のケースを思い出してください。

ICは膀胱の粘膜(間質だから粘膜下?)に炎症がある病気なので、膀胱鏡というカメラを入れてみないことにはわからないんです。

2019年に出版された『間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン』では、潰瘍があるハンナ型(HIC:Hunner type IC)と非ハンナ型(NHIC:Non-Hunner type IC)が別の疾患であることが明確に打ち出されています。

ハンナ型こそ真の間質性膀胱炎であり、今まで非ハンナ型と呼ばれていたものは膀胱痛症候群(BPS:Bladder Pain Syndrome)ではあるものの間質性膀胱炎ではないと捉えている先生も多いらしいです。概念的には、下表のようなイメージになるんですかね。よー知らんけど。

  間質性膀胱炎(IC)  
膀胱痛症候群(BPS) ハンナ型(HIC)  
  非ハンナ型(NHIC)

でも、私たち患者は未診断の仲間も含め、「間質性膀胱炎」というキーワードでつながり、互いの苦痛に共感したり、情報交換をしたりしており、今後もその状況は変わらないでしょう。

病院の選び方

誤解を恐れずに言うと、間質性膀胱炎は先生個人の興味関心やモチベーションに大きく左右される病気です。新しいガイドラインでも推奨度Aの治療法は皆無であり、研究会で「ICの患者は話が長いし、保険点数はとれないしでコスパが悪い」みたいなこと*1が語られています。

blog.okatamako.com

難病でも知名度の高い病気だと、県庁所在地に一個ある大学病院に行けば、とりあえず診断がつき、それなりな治療を受けられたりします。

ICでそういうことはほとんど期待できませんが、皆無ではないのでいくつかの方法を挙げておきます。

診療に応じる医師リスト

間質性膀胱炎研究会公式サイトに「診療に応じる医師リスト が公開されています。自己申告制とはいえ、ここで名乗りをあげている先生なら、まったくの門外漢よりはましかもしれません。

TwitterやアメブロなどのSNS上でイニシャルトークされている医療機関もあり、そういった口コミを頼りに遠方まで出向く方もいらっしゃるようです。

施設基準

後述する私が受けた手術の正式名称は「膀胱水圧拡張術」なので、これをキーにGoogleで検索してみるのも一つの手です。

「"◯◯市" "膀胱水圧拡張術"」のように、地域名と手術名をそれぞれダブルクォーテーション(")で囲み、AND検索すると、けっこうな件数の情報がヒットします。

「◯◯◯加算」や「◯◯◯料」などが並んでいる病院概要ページに施設基準として「膀胱水圧拡張術」が記載されていれば、その病院での手術が認可されているということです。

手術を受けるかどうかは別として、ICという病気を理解している先生と巡り逢える可能性は高いです。

医師からの紹介

私には2人の先生がいて、2人とも「診療に応じる医師リスト」には名前が掲載されていません。

主治医がいる病院は"泌尿器科"という大きいくくりではとても有名な病院だそうで、他科の先生から勧められ受診しました。

紹介状を書いてもらったわけでなくても、医療関係者からの口コミは参考になります。

当時は四六時中おしっこを我慢している状態で、もうとにかく医師は誰でもよかった。思い立ったその日の外来にたまたま出ていた先生の初診に臨み、そのまま主治医となってもらいました。

これがもし、もっと症状が軽く、のんびりと先生の専門分野を検索してみたり、たくさんいる中から優しそうな笑顔の写真を載せている医師を選んだりする余裕があったら、現在の主治医とは出会えなかったかもしれません(笑)。

主治医は一見とっつきにくそうですが、思いやりがあり誠実な人柄であることは、診察の回を重ねるごとに徐々に伝わってきました。

そして、もう一人の先生はICを研究されている方で、ここでは「ICの先生」と呼んでおきます。

私からセカンドオピニオンを希望したわけでなく、主治医が「ICの先生にも術後の膀胱の状態をみてもらいたい。治験の対象になるかもしれないし」とおっしゃり、紹介状を書いてくれました。

他の患者さんの体験談を伺っても、こういうケースはよくあるようなので、ネット上の口コミや先入観にとらわれず、まずは自分にあう先生を見つけ関係を築くことが大切なのかもしれません。

手術のこと

膀胱水圧拡張術はICの診断と治療を兼ねた手術です。

この手術を受けた時のことは『カンシツ闘病記: 間質性膀胱炎ときどき潰瘍性大腸炎』という題名でKindle本を上梓しているので、よかったらこちらも参考にしてください。

術後の悪化はあるのか?

これも皆さんからよく聞かれることで、あくまでも私の場合はこうだったというお話をしておきます。

一般的には(他の病気では)、手術を受け麻酔が切れると、「術後の痛み」が必ずありますよね。切ったり貼ったりする手術だと、元々の病気の痛みとは別に激しい痛みがあるんじゃないかと想像します。

水圧拡張術は膀胱に生理食塩水を入れて膨らますという術式なので、ちょっと違います。

私の場合は「術後の痛み」が皆無でした。

腰椎麻酔が切れた後は、尿カテが入っている不快感のみで、おしっこが膀胱にたまらない分、むしろ普段より痛みが少なく、手術を受けた夜は熟睡できました。

手術を受けると、いったん症状が悪化し、その後「傷口からかさぶたが剥がれる」ように良くなっていくという解説をよく聞きますが、私の場合そういう実感もあまりなかったです。

つまり、良い意味でも悪い意味でもほとんど何も変わらず、トイレに忙しい日常がしばらく続きました。

ただ、手術を受けることにより「間質性膀胱炎」と正式に診断されたこと。それ以上に、やっと私の苦しみに理解を示してくれる主治医と出会えたことが嬉しかったです。

半年で排尿回数が一桁台へ

水圧拡張術を受けるかどうか迷っている人は、まずこのグラフをご覧ください。術後の排尿回数に近似曲線を加えたものです。

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『カンシツ闘病記: 間質性膀胱炎ときどき潰瘍性大腸炎』より

同じ病気の人ならわかると思いますが、本当に調子が悪い時は記録することすら難しいので、頑張れた日がこの回数ということです。

8月に一日の排尿回数が30回超となりましたが、これは膀胱そのものが悪化したというより、全身の状態が悪い時期でした。私には後に他科で診断された血管炎もあり、その影響が大きいようです。

術後翌年の元旦に排尿回数8回/日を記録したのを最後に排尿日誌をつけることを止めました。

8回!!

なんだか、末広がりな数字でおめでたいですよね。

水圧拡張術を受ける前に主治医から「手術の効果は半年くらいしか続かない」と聞いていましたが、私の実感としては半年かけて良くなり、さらに1年、2年とゆっくり着実に回復していった気がします。

薬のこと

どんな治療を受けたのか、皆さん気になるところかと思います。ですが、「◯◯◯がICに効く、効かない」というふうに単純化した話で薬剤名が一人歩きするのは嫌なので、この記事では『間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン』に掲載されている薬の話だけします。

リリカ(プレガバリン)

分類的には鎮痛剤となりますが、ロキソニンのようなNSAIDsと異なり、神経の痛みに効くとされています。

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lyrica-navi.jp

主治医がこの薬を選んでくれたわけですが、実はそれ以前に複数の他科でも私にはリリカが向いているんじゃないかという話が持ち上がっていました。そのことを伝えていなかった主治医から、すっとリリカが出てきた時には「神がかっているな!!」と思いました。

あくまでも個人的な感想ですが、リリカは「冷えると痛む」という種類の痛みにとてもよく効きました。私は自称「難治性冷え性」(笑)を患っており、リリカがうまいこと血管を拡げてくれるのか、この薬がとてもあっています。

ちなみに、「太る」とか「眠くなる」といった副作用を感じることもなく、膀胱以外の痛みにもよく効き、現在も服用を継続しています。

DMSO(膀胱注入)

結論からいうと、私は膀胱注入のようなICに特化した治療は受けていません。

もうすぐ保険適応となるDMSOの治験があったことはご存知の方も多いと思いますが、私も主治医から勧められました。

治験の実施機関となる病院で出会ったのがICの先生で「この病気は治らないけど、絶対に見捨てないからね」と約束してくださいました(治療には限界というものがあるだろうとはわかっていても、いつでも全力投球で情熱的なこの先生のファンは多いと思います)。

その先生が膀胱鏡でご覧になった状態から、DMSO治験はまだ受けなくてもいいと判断したのです。

今、思うこと

ICの先生に「丘さんは今、◯◯歳でしょ。老化現象と同じくらいに症状が治まってくれるといいなと思っているんです」と言われたことがあります。もう、ICの先生のところは受診していないので、主治医を通じて伝えたいです。

「膀胱年齢は20代ですよ(๑˃̵ᴗ˂̵)」

夜はどうしても1回トイレに足を運ぶのですが、日中はほとんど痛みを感じません。

朝、家を出て昼ごはんを食べて帰宅するまで一度もトイレに行かない。こういうことが自然にできてしまうんです。

3年間、再手術せず今日まで過ごせたので、稀な長期寛解症例とでもいえるのでしょうか。担当医である2人の先生には本当に感謝感謝です。

ICに活動期と寛解期という概念があるなら、炎症そのものの活動性は低く、もう一つの持病である潰瘍性大腸炎に例えていうと「粘膜治癒していないけれど、臨床的な寛解」を維持している状態と同じなんだと思います。

ちゃんとした診断がつく前に違う病院で「初期のIC」かもしれないと言われたことがあります。そういう意味では、「保存期のIC」という言葉の方がしっくりきます。

自己免疫疾患的*2にも一度攻撃を受けた臓器はそれなりなダメージを受けているわけで、「治らない」というのは本当のことかもしれませんが、今のところうまいこと保存できています。

*

なんかすごく長文になっちゃいましたね(汗)。

まだまだ書きたいことは沢山あるのですが、これくらいにしておきます。こんな駄文を最後まで読んでいただいた方がいらっしゃったら、ありがとうございます。

*1:参照:日本間質性膀胱炎研究会誌 15(1) 2020

*2:必ずしも「間質性膀胱炎=自己免疫疾患」という意味ではないです。私には複数の自己免疫疾患系の持病があるので、膀胱も病変の一つと勝手に考えています。